角口酒造店
地元の人たちに愛されてこそ本当の地酒である
新潟県との県境、冬は3メートル以上の雪に覆われる日本有数の豪雪地域である長野県飯山市。この地に蔵を構えて150余年、角口酒造店は信州最北端の酒蔵としてその歴史を歩んできました。
創業は1869年。「地元の人たちに愛されてこそ本当の地酒である」の理念のもと、醸される酒の名は「北光(ほっこう)正宗(まさむね)」。北の夜空に光り輝く柄杓型をした北斗七星より命名されました。
長野県全体が甘口傾向にある中、雪国の人たちが求めたのは「辛い酒」。正宗の名に恥じない切れの良い酒を目指し、派手さは無くとも飲み飽きしない、ゆっくりと腰を据えて飲める酒質を追い求めてきました。
25歳で杜氏(とうじ)に
現在蔵を率いるのは昭和59年生まれの6代目・村松裕也さん。東京農大醸造学科卒業後、修行経験もないまますぐ実家に呼び戻され、25歳の時に50代〜70代の蔵人を束ねる杜氏(醸造責任者)を任されました。
酒造歴30年を超えるベテラン勢の中に一人ぽんっと放り込まれた村松さん。精神的にきつい日々を過ごしました。それまで普通酒をメインに造ってきた年配の蔵人たちに、自分の目指す酒は理解してもらえない。ならばと、普通酒は先輩たちに任せながら、純米以上の酒は一人で造りました。
「うちの酒造りは20年遅れていたんです。」
その遅れを取り戻すため、ただひたすら走り続けた村松さん。何度も体調を崩しては倒れ、身体は常にボロボロでした。
やがてベテランの蔵人たちが引退すると、年間雇用の若者を入れ、育てていくことが次の仕事に。自分が思い描いた酒をチームで造る環境を整えていきました。
技術屋としての誇り
しかし、時は無濾過生原酒の全盛期。華やかで味がある酒が好まれる中、地味な北光正宗にとっては厳しい時代でした。
「もっと分かりやすい酒にすれば売れるのに」と言われたこともありました。しかし、「自分のルーツにないものを造るつもりはなかった」。
地元に根差した酒を造るという信念、一杯の感動より一本飲める酒を目指し、そのために技術を磨いてきました。今は時代が変わり、少しずつ味を評価してもらえるようになったと言います。
今、角口酒造店では乳酸を添加しない速醸酛(そくじょうもと)という製法を長野県と共同開発して実践しています。現状に甘んじることなく、常に新しいことにチャレンジする姿勢は、造り手としての飽くなき探求心がゆえでしょうか。
25歳で杜氏になったあの頃を振り返り、「ある程度のものを造って、セールスの力で売ろうということは考えなかった」という村松さん。
「それは本質ではないと思う」。ものづくりの本質は、品質を突き詰めること。
「技術力の高い蔵元を目指したい」という村松さんと北光正宗から、これからも目が離せません。
-
SOLD OUT米の旨味と北光正宗らしいドライさを同時に楽しめる秋の限定酒!
-
SOLD OUT米の旨味と北光正宗らしいドライさを同時に楽しめる秋の限定酒!
-
SOLD OUT甘み、酸味、金紋錦特有の苦味を感じる深い味わい!長野県の酒蔵の跡取り5名のプロジェクト「59醸」